ベルナール・アルノー、語る―ブランド帝国LVMHを創った男

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 皆様はベルナール・アルノー氏はご存知でしょうか?

 大手ラグジュアリーブランドを多数擁する 「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」(以降LVMH)の会長であり、「ファッション界の法皇」と呼ばれるラグジュアリー産業の重鎮です。
 また、買収を駆使し多くのブランドを手中に収めていく姿を揶揄し「カシミアを着た狼」「ターミネーター」と呼ばれることもある野心家の経営者です。
 そんなアルノー氏ですが、フォーブスの世界長者番付にて2023年、2024年二年連続で首位を獲得しました。つまり2024年現在、世界一の大富豪ということになります。

 彼の来歴などを軽くまとめながら本書籍の要約や感想を書いていきたいと思います。

 LVMHには2024年現在75以上のブランドが参加しており、ファッション・香水・時計・宝飾品・酒造など多種多様な事業が含まれております。例えばキャバクラで出されるイメージの高級シャンパン「ドンペリ」も傘下のドン・ペリニヨンという会社が製造してたりします。

 そんな大企業を率いるアルノー氏はどのような人物なのか、次項でお伝えできればと思います。

 彼の来歴はフランスの不動産会社から始まりました。父から譲り受けた不動産会社を順調に拡大していましたが、ミッテラン政権の社会主義的政策に危機感を覚え、1982年にニューヨークへ移住しアメリカで不動産事業を継続します。

 そんな彼の転機になったのは1984年、クリスチャン・ディオールを有する企業マルセル・ブサック・グループの買収に着手したことです。当時のフランスは自由主義的政策へ方針転換したところであり、アルノー氏はフランスへ戻る足がかりを探していました。そこで破産し身売りの真っ最中だったブサックに目を付け、親族や銀行家から資金を集めて買収に名乗りを上げました。旧経営陣からも信任を得てブサックの買収を成立させています。その後は大規模なリストラ策や不採算事業の売却など非情とも言える経営戦略で業績回復に成功しました。

 この時点で成功者と言える状況ですがアルノー氏の野心は次の獲物を見据えていました。それこそが既にラグジュアリーブランドとして一大勢力であったLVMHです。

 1987年にLVMHの経営不振による株価暴落を皮切りに、アルノー氏はLVMH株を買い占め大株主に。
 当時の経営者だったアラン・シュヴァリエとアンリ・ラカミエを退任に追い込み、89年にはLVMHの買収を完了し、同社会長に就任しました。

 その後も次々と買収を成功させ、LVMHのブランド数は2002年に40社、2011年には60社、2024年には75社以上と拡大しています。ただ買収していくだけではなく、手に入れたブランドに資金を注入し、業績を立て直しているのも特徴的です。LVMHにおいてもアルノー氏就任後11年で株価は15倍に、利益は500%に達しました。

 そんなアルノー氏ですが買収に失敗した事例もあります。
 1999年にグッチに敵対的買収を仕掛けていますが、グッチ経営陣の抵抗とフランソワ・ピノー率いるPPRの介入によって買収は失敗しました。ただし2001年に和解した際にグッチ株を売却し、6億ドルほど利益を獲得しています。
 また、2010年にはエルメスの買収を進めていましたが、経営者一族による持ち株会社設立などにより議決権獲得には至らず、2014年には和解しました。

 そのようなアルノー氏がどのようなマインドセットでビジネスと向き合ってきたのか、それが「ベルナール・アルノー、語る―ブランド帝国LVMHを創った男」にて語られています。
 さて、前置きが長くなりましたが次項より本書について記述していきます。

 まずこの書籍はアルノー氏とイヴメサロヴィッチさんによる一問一答のインタビュー形式で進んで行きます。
 アルノー氏の来歴やビジネスモデル、私生活や今後の展望など幅広く質問していく中で、読者はアルノー氏の挑戦と野心の源泉を垣間見るでしょう。

 特にアメリカに初めて訪れた際のタクシー運転手とのエピソードは印象に残りやすいかと思います。
 アルノー氏が運転手に「フランスについて何か知っているか? 大統領は?」と尋ねると「大統領は知らないがクリスチャン・ディオールなら知っているよ」と答えた。このことからアルノー氏はディオールがフランスの宣伝大使であると確信した、と綴っています。
 実際にアルノー氏はディオールを買収したことを始まりにして、ラグジュアリー業界で世界一の経営者の座を手にしていますからその見立ては正解だったということになりますね。

 また、本書の中でLVMHの買収についても「目標ではなく出発点」であったと語られています。アルノー氏はブランド業界のトップに立つことが目標であり、それ故にクリスチャン・ディオールを手に入れても、LVMHを手に入れても止まることはなく進み続けてきた。そしてLVMHが世界一のブランドになっても「自己満足ほど悪いことはない。自分を成功者だと思ったらそこでおしまいなのです」と衰えない向上心と野心を覗かせています。

 今回は「ベルナール・アルノー、語る―ブランド帝国LVMHを創った男」についてでした。
 非常に有益な書籍ですので 是非ご一読ください……といいたいところですが

 この書籍絶版なのでプレミアがついて7,000円前後するんですよね……

 電子書籍化もされていないようなので定価購入がほぼ不可能。個人的には7,000円出す価値はあると思いますが、躊躇いがでる価格だと思います。私も相当悩んだ結果プレ値で購入しました。もし古本屋にあればこれよりは安く買えるかも?

 書かれた時期も2000年頃だったため、書かれてる情報が古い、という点も付け加えておきます。ベルナール・アルノー氏が書かれた書籍がほかに見当たらないので唯一無二の書籍ではあるんですがね。
 願わくば新版が発売されるとと嬉しいですね。

 ここまでお付き合いありがとうございました。また次回も読んでいただけると嬉しいです。

滝川蛮族
元蛮族
年100冊以上を読む都内在住20代。
日々のコーヒー代のためブログ執筆開始。
今はゆるゆる会社員をやりながら色々と挑戦中!
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この記事を書いた人

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